広島大学FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS)

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全学取組実績

数理科学と生命科学の融合による新たな社会実装(クロマチン動態数理研究拠点 拠点長 学術室 楯 真一理事・副学長)


(「2018-2019年NERPS活動報告書」掲載記事)

クロマチン動態数理研究拠点は,数理科学と生命科学の融合による新たなゲノム科学研究を開拓しています.現在のゲノム科学は,ゲノム配列,ゲノムに対する修飾など「化学的」なデータに基づいて展開していますが,実際に細胞の核内に周密に押し込められたゲノムが,細胞が受ける様々な外部刺激により,どのように核内での立体構造を変化させて遺伝情報制御をしているかという「物理的」側面の解明はほとんど行われていません.私達は,この問題を先端計測と数理科学の緊密な連携により推進しています.

世界に他に例を見ない規模で核内遺伝子座の物理的動態データを既に集積しており,また,世界初となる核内クロマチン立体構造の電子顕微鏡像の取得にも成功しています.先進的な先端計測で取得した膨大なデータを現象数理モデリングとAI自動解析を併用することで,核内におけるゲノム立体構造変化の実態を明らかにします.

私達の拠点は,現象数理学を使った数理モデリングによるデータ解析に強みがあります.上記の先端研究を通して培った様々な数理モデリング技法は,渋滞のないアリの集団移動の数理モデル,速度に応じて脚の動きが変わる馬の行動をもとに構築した歩行様式を自動的に変化させるモデルなども行っています.生物が持つ持つ合理的な仕組みを数理モデルに落とし込んで社会実装につなげる研究も展開しています.

SDGsで示される開発目標設定に対しては,生物が持つ様々な外部環境変化に対する強靱性から学ぶレジシレンスの数理モデル構築を通して,目標9. 「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」,目標14.「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する目標」,15.「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」への貢献が想定される.単純な数理モデルからも,全てのプレーヤーが最大限の成果を追求する社会はシステムとして不安定であり,結局のところ極端な利益の偏りが起こると同時に他が消滅する結果になることは分かっている.生物集団では多様性を保ちながら,それぞれの個体が適切な相互抑制と利潤追求をすることで持続的な生活の実現と進化を遂げてきている.細胞内の情報制御も同様に,様々な分子が適切な相互抑制関係をもつことで外部環境変化に対する強靱性を維持している.生物が進化で獲得した強靱性を現象数理モデルとして書き落とすことで,生物に真似た社会システム管理の形態を実現できると考える.このモデルの構築をとおして,上記のSDGs目標に対して必要な施策や規制へと還元できると考えます.

RcMcD-SDGs_1
RcMcD-SDGs_2

 

 

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