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強すぎる光と栄養不足は海の生産力を低下させている!?(統合生命科学研究科 特任助教 小原静夏)


海の生物生産を支えているのは、基礎生産者である植物プランクトンである。その中でも最も生物量が多い「ケイソウ」は沿岸域の生産力を支える重要な生物群で、彼らの減少は海域の生産力の低下を意味する。しかし近年の瀬戸内海ではこのケイソウが減少している。その原因として気候変動に伴う水温上昇や、高度経済成長期後の徹底した排水規制による栄養塩の減少などが挙げられているが、我々の研究チームではさらに「光」に着目した。植物プランクトンにとって光は不可欠であるが強すぎる光は逆に光合成阻害をもたらす。我々の研究によると栄養が制限された状態では一部のケイソウは強光阻害を受けやすくなり(Yano et al. 2023 FMS)、実際にこの種は瀬戸内海で減少傾向にあった。現在はさらに多くの種について研究を進めているが、この研究成果は近年の瀬戸内海で大きな課題となっている海域ごとのきめ細やかな栄養塩管理(いつ、どこで、どの程度の栄養塩濃度が望ましいか)を検討するエビデンスとして重要であると考える(ターゲット14.2)。

【本研究の成果】R. Yano, S. Ohara, K. Koike. High light stress under phosphorus limitation in summer may accelerate diatom shift from Skeletonema to Chaetoceros in an oligotrophic coastal area of Japan. Frontiers in Marine Science, 2023, 10, 1095762. DOI: 10.3389/fmars.2023.1095762

  • 投稿日:2023年8月23日

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