広島大学FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS)

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熱帯林の生物多様性モニタリング支援ツールとしてのフン虫データベースの構築(先進理工系科学研究科 教授 保坂哲朗)


 熱帯林の減少・劣化と生物多様性の喪失は熱帯地域における主要な環境・社会問題です。さらに近年、多くの研究が世界規模の昆虫の減少と、それによる生態系機能への影響を報告しています。食糞性コガネムシ類(以下、フン虫)は,哺乳類などのフンをエサとするコガネムシの総称です。フン虫は採集が比較的容易であるほか,森林環境の変化に敏感であり,その多様性は大型哺乳類など他の動物相をも反映するため,熱帯林の優れた環境指標生物として知られています。またフン虫は、大量のフンを素早く地中に埋めるため、土壌への養分還元やフンに混入した種子の二次散布、温室効果ガスの排出抑止などの生態系機能も併せ持っています。

 一方、どこでどのように昆虫が減少しているのか、これらの減少がどのように生態系に影響するのかは、正確な昆虫の分類や分布情報の上に初めて成り立つものです。しかしながら、東南アジアの多くの昆虫グループにおいて、このような情報は整備されていません。フン虫に関しても、現在のところ図鑑やデータベースは存在せず、種同定(種名を調べる作業)はごく少数の分類専門家に頼らざるを得ません。したがって、文献や博物館標本、文書化されていない専門家の知識などの既存データを整理・照合し、これらの知識を現地の非専門家が使いやすい形に「翻訳」する必要があります。これが実現すれば、熱帯地域における自立的・持続的な生物多様性モニタリングを可能にする強力なツールとなるだろう。本申請プロジェクトでは、東南アジア地域のフン虫研究をけん引するシンガポールと日本の研究者が、これまでに収集した多数の標本をもとに、非専門家も利用しやすい東南アジアのフン虫データベースを構築することを目的とします。また、このデータベースを利用し、土地利用変化や気候変動など、広域スケールでのフン虫多様性に影響を与える要因解明を行います。本プロジェクトは広島大学とシンガポール・南洋理工大学の共同研究として行っています。

  • 投稿日:2024年9月25日

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