児童虐待は近年深刻な社会問題となっており、虐待の発生予防、早期発見・対応が急務である。広島県では2009年度に広島県歯科衛生連絡協議会(行政・大学・県歯科医師会で構成)を母体とした児童虐待防止対策会議が組織され、広島県内3か所の一時保護所を月に1回訪問し、入所児童の口腔内診査と歯科保健指導を続けてきた。
2022年度からは、広島県・広島市からの業務委託として、広島県歯科医師会が中心となって継続しており、2023年度も引き続き、広島大学小児歯科から小児歯科医師の定期的な派遣を継続している。
口腔内診査では、通常の診査項目に加え、身体的虐待を疑わせる変色歯や歯の破折、顎顔面の外傷などについても診査し、緊急に処置が必要な場合には、入所中の歯科受診もサポートしている。
また、歯科保健指導としては、児童に対して個別や集団での口腔衛生指導や児童参加型の講話を行い、施設職員に対しても、仕上げみがきや注意すべき口腔習癖について共有している。
あわせて、基本的な生活習慣調査やアンケート調査も実施し、口腔内診査の結果とともに、広島大学小児歯科が集計、分析、評価を分担し、専門学会等での報告も続けている。