消費者の企業選択をSDGsの観点から検証(NERPS 研究員 山根 友美 拠点長 金子 慎治)

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SDGsは2030年までに、国も企業も個人も、みんなが協力し、誰一人として取り残さない持続可能な世界を実現することを目指しています。特に、SDGsを達成するためには、民間セクターの積極的な取り組みが欠かせません。慈善事業や寄付など社会貢献活動ではなく、自らの本業を通じて社会的課題の解決に貢献することが求められています。それによって、企業が収益を得ながら継続的に繁栄をする社会を⽬指すことができます。ただし、このように本業を通じてSDGsに積極的に取り組むことが一般消費者からの支持を得ることが出来るのかは明らかになっていません。一般消費者がSDGsに積極的に取り組む企業を選択することが分かれば、企業はさらにSDGsへの取り組みを加速することが考えられます。一方で、実際にSDGsに取り組んでいなにも関わらずSDGsに取り組んでいるように見せかけることを「SDGsウォッシュ」と言います。SDGsウォッシュを防止するためには企業がSDGsの本質を理解し真摯に取り組むことが重要であると共に、消費者も企業のSDGsウォッシュを見抜き、SDGsを本業として取り組む企業のことを理解することが必要です。

このような背景をもとに私たちは、全国規模の調査を実施し、一般消費者は企業選択をする際に、企業のSDGsの取り組みを評価するか検証しました。また、SDGsに関する意識向上を行うことの効果を計測しました。これらの研究成果は4報の論文にまとめ、国際学術雑誌(SCIジャーナル)に掲載されました。

【研究結果ポイント】

＊一般消費者は、商品購入、投資、転職・就職する際に、SDGsに積極的に取り組む企業を選択する。

＊企業がSDGsの取り組みから利益を得ることを支持する。ただし、支持率は低い。

＊SDGsに関する意識向上を促すことで、SDGsの取り組みから利益を得る企業への支持が上がる。

＊若者世代(18-30歳)は上の世代よりも社会、学校や企業にSDGsに積極的に取り組むことを期待する。

＊若者が就職のために企業選択を行う際は、賃金や仕事の安定を重視する一方で、SDGsに消極的な企業には高い賃金でも支持が低い(図)。

【参考文献】

Yamane, T., Kaneko, S., 2022. The Sustainable Development Goals as New Business Norms: A Survey Experiment on Stakeholder Preferences. Ecol. Econ. 191, 107236. https://doi.org/10.1016/j.ecolecon.2021.107236

Yamane, T., Kaneko, S., 2021. What Motivates Stakeholders to Demand Corporate Social Responsibility: A Survey Experiment. Sustainability 13, 8313. https://doi.org/10.3390/su13158313

Yamane, T., Kaneko, S., 2021. Impact of raising awareness of Sustainable Development Goals: A survey experiment eliciting stakeholder preferences for corporate behavior. J. Clean. Prod. 285, 125291. https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2020.125291

Yamane, T., Kaneko, S., 2021. Is the younger generation a driving force toward achieving the sustainable development goals? Survey experiments. J. Clean. Prod. 292, 125932. https://doi.org/10.1016/j.jclepro.2021.125932

また、研究教育等にご活用いただけるように、本研究で使った日本SDGsに関する家計パネル調査(JHPSDGs)2019-2020 のローデータ公開しています。詳細はこちらから。SDGsに関連するパネルデータの公開(NERPS 研究員 山根友美) | 広島大学FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS) (hiroshima-u.ac.jp)