バングラデシュ農村地域の高血圧・腎障害を有する住民に向けたモバイルヘルステクノロジーを活用した健康教育プロジェクト
高血圧プロジェクト_morimich@hiroshima-u高血圧及びこれを原因とする死亡は発展途上国で高い。バングラデシュの、自己申告による高血圧の有病率は12.5%と言われているが、実際は1/3の国民が一度も血圧を測定したことがないとの推計がある。高血圧は食習慣だけではなく、土地の低いバングラデシュでは、地球温暖化により海水からの井戸水への影響も指摘される。
本プロジェクトでは、農村地域に在住する女性をコミュニティ・ヘルス・ワーカー(CHW)として育成し、日本で開発された食品や尿中塩分測定器を活用し、1日の塩分摂取量を住民に自覚してもらい、さらにポータブル健診機器を用いて血圧等の測定を定期的に実施し、家庭訪問とSMSを用いて住民への保健指導を実施した。結果、高い行動変容と血圧の改善効果を示すことができた。
また、バングラデシュでは腎機能(腎臓疾患の存在)をスクリーニングする機会がなく、治療を受けることなく死亡する事例が多い。これに対しても、現地の研究所(icddr,b)と共同でサーベイランスシステムを用いて、住民の腎機能とそのリスクを測定し、腎機能低下者の割合を明らかにした。また、地域住民に「腎臓を守ること」の健康教育を広く実施し、大きな改善をみることができた。
バングラデシュにおける糖尿病網膜症からの失明を防ぐ教育プロジェクト
糖尿病網膜症プロジェクト_morimich@hiroshima-u糖尿病は途中失明の主要な原因の一つである。バングラデシュは高い糖尿病人口を抱えるが、医療体制が脆弱で、眼のスクリーニングシステムも発達しておらず、糖尿病をもつ住民の多くが失明に至る。糖尿病網膜症についての認識や知識の欠如は、糖尿病患者の多くが網膜スクリーニングを受けるようプライマリ・ケア医療機関から専門病院に紹介される指示に従わない最大の理由であると報告されている。
今回、われわれは、バングラデシュの医療機関と連携し、糖尿病患者に対して専門病院への受診を促す教育的プロジェクトを行った。識字率が低くてもわかるように、文化的にも工夫した教材を作成し、面接や電話による教育を実施し、高い受診率につながるという結果を得た。また、さまざまな教育教材を作成し、地域住民に対する糖尿病網膜症についての教育も広く行った。
バングラデシュにおけるスクールナースを試験的に設置した学校保健プロジェクト
(健康診断の導入と栄養不良(低栄養と過剰栄養)と腸内寄生虫を改善・予防するプロジェクト)
子供たちの健康(学校保健)は、国家の健康指標の向上の基盤となる。バングラデシュでは、学校看護師(スクール・ナース)の配置はなく、定期健康診断も行われていない。現在においても、子供たちの主要な健康リスクは、肺炎、下痢、腸内寄生虫といった感染性疾患や低栄養といった栄養障害である。本プロジェクトは、グラミン・カレドニアン看護大学(バングラデシュ)の協力を得て、複数の小学校に実験的に学校看護師を配置し、子供たちの栄養状態や感染症の改善を試みる。グラミン・コミュニケーションズと連携し、フィールドとなる小学校の全生徒の生活習慣・食事調査、健康診断を実施し、その結果を生徒の親にもフィードバックしながら、1年間にわたって健康教育を行う。新型コロナ感染症パンデミック禍において、個人の衛生状況や栄養を改善し、衛生的な環境を整えていくことは重要である。本プロジェクトでは、学校看護師の養成カリキュラムを試験的に作成し、看護大学の教員や大学院生に受講してもらい、将来的な配置に向けて学校看護師を育てる。”