下水処理では活性汚泥法と称される好気性の微生物を利用した方法が先進国において主流となっている。しかし途上国・新興国においては,この活性汚泥法は受け入れられていない。日本のようにお金とエネルギーを存分にかけて,金ピカピンの処理をする技術−活性汚泥法−をそのまま移転しても根付かないことは明白である。そのため,地域の経済構造,社会構造等の実状に応じた“適切”な下水処理システムを整備してゆくことが緊急課題となっている。このような背景を下に,開発途上国に適用可能な低コスト・省エネで維持管理が容易な下水処理Downflow Hanging Sponge(DHS)リアクターの開発に携わってきた。その結果,2014年にインドのアグラ市に世界初のDHS下水処理システムの第1号機が実装され,途上国での下水処理に目処がついてきた。
大橋晶良教授はJICAの中南米国技術者を対象とした課題別研修「排水処理技術」にコーディネイターとして携わっている。ほとんどの研修員が自国に従来型の活性汚泥法ではなくDHSシステムを導入したいと考え,帰国後のアクションプランにDHSシステムの啓蒙,導入活動を掲げている。しかし普及していない。その原因はDHS建設のイニシャルコストが阻害になっている。そこで,コストを下げるための改良型DHSシステムの開発を行っている。