児童虐待は近年深刻な社会問題となっており、虐待の発生予防、早期発見・対応が急務である。
広島県では平成21年度に広島県歯科衛生連絡協議会(行政・大学・県歯科医師会で構成)を母体とした児童虐待防止対策会議が組織され、その活動の一環として、広島大学小児歯科では、広島県内の一時保護所をそれぞれ月1回訪問し、入所児童の口腔内診査ならびに口腔衛生指導を実施している。 通常の診査項目に加え、身体的虐待を疑わせる変色歯や歯の破折、顎顔面の外傷などについても診査し、緊急に処置が必要な場合には、入所中の歯科受診もサポートしている。
また、児童に対して個別や集団での口腔衛生指導や児童参加型の講話を行い、施設職員に対しても、仕上げみがきや注意すべき口腔習癖について共有している。 歯みがきの回数や朝食を食べているか、定期的に歯科受診する習慣があるか、などの基本的な生活習慣調査を行い、入所児童の発達障害および養育環境について、一時保護所職員である児童福祉司にアンケート調査する等して、口腔内診査の結果と併せて集計し、専門学会等での報告を続けている。